第8章:フレームワーク一覧:マネジメント・交渉系
8-1. 概要
人間関係を動かす技術。それがマネジメントと交渉である。
部下へのフィードバック、上司への要望、取引先との条件交渉──どれも「相手を動かす」という点で共通している。
この章では、角を立てずに主張を通し、人を育てるためのフレームワークを扱う。
8-2. フレームワーク一覧
| 名前 | 構造・要素 | 用途 |
|---|---|---|
| DESC法(デスクほう) | Describe(描写)→ Express(表現)→ Suggest(提案)→ Consequence(結果) | 交渉、要望、主張 |
| SBI型(エスビーアイがた) | Situation(状況)→ Behavior(行動)→ Impact(影響) | 部下へのフィードバック |
| サンドイッチ法 | Positive(褒め)→ Negative(指摘)→ Positive(励まし) | 指導、評価面談 |
8-3. 各フレームワークの詳細
DESC法
アサーション(自己主張)理論に基づく交渉術。感情的にならず、論理的に主張を通す。
| 要素 | 英語 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| D | Describe | 事実を客観的に描写する | 「先週の会議で、私の発言が途中で遮られました」 |
| E | Express | 自分の気持ちを表現する | 「正直、意見を聞いてもらえていないと感じました」 |
| S | Suggest | 提案・要望を述べる | 「次回は最後まで話を聞いていただけると嬉しいです」 |
| C | Consequence | 結果・選択肢を示す | 「そうしていただければ、より建設的な議論ができると思います」 |
sequenceDiagram
participant 自分
participant 相手
Note over 自分: D:事実を描写
自分->>相手: 「先週、こういうことがありました」
Note over 自分: E:気持ちを表現
自分->>相手: 「私はこう感じました」
Note over 自分: S:提案する
自分->>相手: 「こうしていただけませんか」
Note over 自分: C:結果を示す
自分->>相手: 「そうすれば、こうなります」
ポイント:Describeで事実だけを述べることで、相手が防御的にならない。感情はExpressで分離して伝える。
SBI型
Center for Creative Leadership発祥のフィードバック技法。具体的で、相手が受け入れやすい。
| 要素 | 英語 | やること | 例(褒める場合) | 例(指摘する場合) |
|---|---|---|---|---|
| S | Situation | 状況を述べる | 「昨日のプレゼンで」 | 「今朝の会議で」 |
| B | Behavior | 具体的な行動を述べる | 「データを図解して説明していたね」 | 「資料の準備が間に合っていなかったね」 |
| I | Impact | その影響を述べる | 「おかげでクライアントの理解が深まった」 | 「議論が進まず、時間をロスした」 |
graph LR
A[S:いつ・どこで] --> B[B:何をした]
B --> C[I:どんな影響があった]
ポイント:「あなたは○○だ」という人格評価ではなく、「この行動がこの影響を生んだ」という事実ベースで伝える。
サンドイッチ法
批判を褒め言葉で挟む技法。相手のモチベーションを維持しながら改善点を伝える。
| 要素 | やること | 例 |
|---|---|---|
| Positive | まず褒める | 「資料の構成はとても分かりやすかったよ」 |
| Negative | 改善点を伝える | 「ただ、データの出典が不明確だったから、次回は明記してほしい」 |
| Positive | 励まして締める | 「全体的には良い出来だった。次も期待してるよ」 |
graph TD
A[Positive:褒める] --> B[Negative:指摘する]
B --> C[Positive:励ます]
注意点:使いすぎると「また褒めてから何か言うんでしょ」とパターンを読まれる。SBI型と併用すると効果的。
8-4. 使い分けの基準
| 状況 | 推奨フレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 上司・同僚への要望 | DESC法 | 感情と事実を分離して伝えられる |
| 部下へのフィードバック | SBI型 | 具体的で受け入れやすい |
| 評価面談 | サンドイッチ法 | モチベーションを維持できる |
| クレーム対応 | DESC法 | 冷静に状況を整理できる |
| 褒める時 | SBI型 | 何が良かったか具体的に伝わる |
8-5. フィードバックの流れ
sequenceDiagram
participant 上司
participant 部下
Note over 上司: サンドイッチ法で全体を構成
上司->>部下: 「今月の営業成績、よく頑張ったね」
Note over 上司: Positive
Note over 上司: SBI型で具体的に指摘
上司->>部下: 「ただ、先週のA社訪問で(S)」
上司->>部下: 「見積もりの提示が遅れたよね(B)」
上司->>部下: 「先方が他社に流れかけた(I)」
Note over 上司: Negative(SBI型)
上司->>部下: 「でも、リカバリーは見事だった。来月も期待してる」
Note over 上司: Positive
8-6. DESC法の応用:交渉場面
sequenceDiagram
participant 自分
participant 取引先
自分->>取引先: D:「今回の納期が当初より2週間遅れています」
自分->>取引先: E:「正直、こちらのスケジュールにも影響が出ています」
自分->>取引先: S:「今後は遅延の可能性がある場合、1週間前にご連絡いただけませんか」
自分->>取引先: C:「そうしていただければ、こちらも調整が可能です。難しければ、別の対応を検討する必要があります」
ポイント:Consequenceで「良い結果」と「別の選択肢」の両方を示すことで、相手に選ばせる形になる。
8-7. まとめ
マネジメント・交渉の基本は「事実と感情を分離する」こと。
- 主張を通したい → DESC法
- 具体的にフィードバックしたい → SBI型
- モチベーションを維持したい → サンドイッチ法
感情的にならず、事実ベースで伝える。それが人を動かす技術である。