第7章:フレームワーク一覧:提案・説得系
7-1. 概要
「Yes」と言わせる技術。それが提案・説得である。
論理だけでは人は動かない。事実と解釈と行動を繋げ、相手が「なるほど、それならやろう」と思える道筋を作る必要がある。
この章では、提案を通すためのフレームワークを扱う。
7-2. フレームワーク一覧
| 名前 | 構造・要素 | 用途 |
|---|---|---|
| 空・雨・傘(そら・あめ・かさ) | 空(事実)→ 雨(解釈)→ 傘(行動) | コンサル資料、意思決定 |
| TAPS法(タップスほう) | To be(理想)→ As is(現状)→ Problem(問題)→ Solution(解決策) | 改善提案書、企画書 |
| SCQA法(エスシーキューエーほう) | Situation(状況)→ Complication(複雑化)→ Question(問い)→ Answer(答え) | プレゼン冒頭、ストーリーテリング |
| FABE法(ファブほう) | Feature(特徴)→ Advantage(優位性)→ Benefit(利益)→ Evidence(証拠) | 商品プレゼン、営業資料 |
7-3. 各フレームワークの詳細
空・雨・傘
マッキンゼー発祥の思考法。事実から行動までを一直線に繋げる。
| 要素 | 意味 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| 空 | 事実 | 客観的事実を述べる | 「空を見たら曇っている」 |
| 雨 | 解釈 | 事実から予測する | 「雨が降りそうだ」 |
| 傘 | 行動 | 取るべき行動を提案する | 「傘を持っていこう」 |
graph LR
A[空:事実<br>売上が前年比80%] --> B[雨:解釈<br>このままでは赤字になる]
B --> C[傘:行動<br>新規顧客開拓を強化しよう]
ポイント:空と雨の繋がりが弱いと、傘(提案)が唐突に見える。解釈の論理を丁寧に説明することが重要。
TAPS法
理想と現状のギャップを見せて、解決策を提示する。改善提案の王道。
| 要素 | 英語 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| T | To be | 理想の姿を示す | 「本来、月間100件の受注が目標です」 |
| A | As is | 現状を示す | 「しかし現状は60件にとどまっています」 |
| P | Problem | 問題を明確にする | 「原因は営業リソースの不足です」 |
| S | Solution | 解決策を提示する | 「外部委託で20件分を補填することを提案します」 |
sequenceDiagram
participant 提案者
participant 聞き手
提案者->>聞き手: T:「本来こうあるべきです」
Note over 聞き手: 理想を共有
提案者->>聞き手: A:「でも現状はこうです」
Note over 聞き手: ギャップを認識
提案者->>聞き手: P:「問題はここにあります」
Note over 聞き手: 原因を理解
提案者->>聞き手: S:「だからこうしましょう」
Note over 聞き手: 解決策に納得
SCQA法
バーバラ・ミントの「ピラミッド原則」に基づく構造。プレゼンの冒頭で聞き手を引き込む。
| 要素 | 英語 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| S | Situation | 状況を説明する | 「当社は業界3位のシェアを持っています」 |
| C | Complication | 複雑化・課題を提示する | 「しかし、新規参入企業に追い上げられています」 |
| Q | Question | 問いを立てる | 「どうすればシェアを維持できるでしょうか?」 |
| A | Answer | 答えを示す | 「差別化戦略への転換を提案します」 |
graph TD
A[S:状況<br>安定した状態] --> B[C:複雑化<br>問題が発生]
B --> C[Q:問い<br>どうすれば?]
C --> D[A:答え<br>解決策を提示]
ポイント:Complicationで「このままではマズい」と思わせることで、Answerへの期待が高まる。
FABE法
商品やサービスの価値を伝えるためのフレームワーク。営業・プレゼンに最適。
| 要素 | 英語 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| F | Feature | 特徴を説明する | 「このソフトはクラウド型です」 |
| A | Advantage | 優位性を説明する | 「だからインストール不要で、どこからでもアクセスできます」 |
| B | Benefit | 顧客にとっての利益を説明する | 「御社の営業担当は外出先でもリアルタイムに情報更新できます」 |
| E | Evidence | 証拠を示す | 「導入企業では営業効率が30%向上しています」 |
graph LR
A[F:特徴<br>何ができるか] --> B[A:優位性<br>他と何が違うか]
B --> C[B:利益<br>あなたに何が良いか]
C --> D[E:証拠<br>本当にそうなのか]
7-4. 使い分けの基準
| 状況 | 推奨フレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 改善提案を通したい | 空・雨・傘 / TAPS法 | 事実→解釈→行動の流れが明確 |
| プレゼン冒頭で引き込みたい | SCQA法 | 問題提起で興味を引ける |
| 商品・サービスを売りたい | FABE法 | 顧客利益を明確に伝えられる |
| 短時間で説得したい | 空・雨・傘 | シンプルで覚えやすい |
7-5. 提案・説得の基本コンボ
SCQA法 → FABE法:引き込んでから価値を伝える
sequenceDiagram
participant 提案者
participant 聞き手
Note over 提案者: SCQA法で引き込む
提案者->>聞き手: S:「御社の業務効率化は課題ですよね」
提案者->>聞き手: C:「しかし既存システムでは限界があります」
提案者->>聞き手: Q:「どうすれば解決できるでしょうか?」
提案者->>聞き手: A:「当社のサービスが解決します」
Note over 提案者: FABE法で価値を伝える
提案者->>聞き手: F:「このサービスはAI搭載です」
提案者->>聞き手: A:「従来の3倍の速度で処理できます」
提案者->>聞き手: B:「御社の残業時間を半減できます」
提案者->>聞き手: E:「導入企業の実績がこちらです」
7-6. まとめ
提案・説得の基本は「相手の頭の中に道を作る」こと。
- 事実から行動へ → 空・雨・傘
- 理想と現状のギャップ → TAPS法
- 問いで引き込む → SCQA法
- 価値を伝える → FABE法
論理の道筋があれば、相手は自然と「Yes」に辿り着く。