第17章:リキャスト事例
ここで紹介するのはあくまで一例です。状況や相手に応じて、自分なりの組み合わせを見つけてください。
17-1. 概要
リキャスト(Recast)とは、フレームワークを本来の用途とは異なる場面で使う技術である。
営業用のフレームワークを創作に、ビジネス用のフレームワークを雑談に──用途を「役割を変えて再配置」することで、フレームワークの活用範囲は無限に広がる。
17-2. リキャストの基本原則
| 原則 |
内容 |
| 本質を見る |
フレームワークの「構造」を理解し、表面的な用途に囚われない |
| 目的で選ぶ |
「何を達成したいか」から逆算して選ぶ |
| 試行錯誤 |
合わなければ別のフレームワークを試す |
graph TD
A[フレームワーク] --> B[本来の用途]
A --> C[構造・本質]
C --> D[別の用途に適用]
D --> E[リキャスト成功]
17-3. リキャスト事例集
事例1:PASONA法を創作告知に
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
PASONA法 |
| 本来の用途 |
セールスレター、LP |
| リキャスト先 |
Web小説の公開告知 |
| 要素 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| Problem |
顧客の悩みを提起 |
読者の「退屈」「刺激がない」を提起 |
| Affinity |
共感を示す |
「私も同じでした」と作者の体験を共有 |
| Solution |
商品を提示 |
作品を提示 |
| Offer |
具体的な提案 |
「第1話はこちら」とリンク |
| Narrowing |
限定性 |
「今だけ全話無料」「期間限定公開」 |
| Action |
行動を促す |
「今すぐ読む」 |
sequenceDiagram
participant 告知文
participant 読者
告知文->>読者: P:「最近、心が動く物語に出会えていますか?」
告知文->>読者: A:「私もそうでした。だから書きました」
告知文->>読者: S:「これは、失った記憶を取り戻す少女の物語です」
告知文->>読者: O:「全10話、完結済み」
告知文->>読者: N:「今週末まで全話無料公開中」
告知文->>読者: A:「第1話を読む→【リンク】」
事例2:SBI型をレビューに
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
SBI型 |
| 本来の用途 |
部下へのフィードバック |
| リキャスト先 |
他者作品へのレビュー |
| 要素 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| Situation |
業務の状況 |
作品のどの場面か |
| Behavior |
部下の行動 |
作品の具体的な表現・描写 |
| Impact |
業務への影響 |
読者としてどう感じたか |
sequenceDiagram
participant レビュー
participant 作者
レビュー->>作者: S:「第3章のクライマックスで」
レビュー->>作者: B:「主人公が無言で涙を流すシーンがありましたよね」
レビュー->>作者: I:「あの沈黙が、言葉より雄弁で、胸に刺さりました」
事例3:SCQA法を自己紹介に
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
SCQA法 |
| 本来の用途 |
プレゼン冒頭、提案書 |
| リキャスト先 |
自己紹介 |
| 要素 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| Situation |
ビジネスの状況 |
自分の経歴・背景 |
| Complication |
課題・問題 |
自分が直面した困難 |
| Question |
問いかけ |
その困難からの問い |
| Answer |
解決策 |
今の自分・活動 |
sequenceDiagram
participant 自分
participant 聴衆
自分->>聴衆: S:「私は10年間、会社員をしていました」
自分->>聴衆: C:「でも、ずっと"自分の言葉"で表現したいと思っていました」
自分->>聴衆: Q:「どうすれば、自分らしく生きられるのか?」
自分->>聴衆: A:「その答えが、創作活動でした。今は小説を書いています」
事例4:5Whyを創作に
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
5Why |
| 本来の用途 |
根本原因分析 |
| リキャスト先 |
キャラクターの動機深掘り |
| 回数 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| 1回目 |
問題の直接原因 |
キャラの表面的な行動理由 |
| 2〜4回目 |
原因の原因 |
行動の背景にある感情・過去 |
| 5回目 |
根本原因 |
キャラの核心的な動機・トラウマ |
graph TD
A[行動:敵を殺そうとする] --> B[なぜ?:復讐したいから]
B --> C[なぜ?:家族を殺されたから]
C --> D[なぜそれが許せない?:自分が守れなかったから]
D --> E[なぜ守れなかった?:力がなかったから]
E --> F[根本動機:無力だった自分への怒り]
事例5:PREP法を雑談に
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
PREP法 |
| 本来の用途 |
報告書、プレゼン |
| リキャスト先 |
雑談でのエピソードトーク |
| 要素 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| Point |
結論 |
オチ・言いたいこと |
| Reason |
理由 |
なぜその話をするか |
| Example |
具体例 |
エピソードの詳細 |
| Point |
結論再掲 |
オチを繰り返す |
sequenceDiagram
participant 自分
participant 相手
自分->>相手: P:「この前、めちゃくちゃ恥ずかしいことがあって」
自分->>相手: R:「急いでたから確認しなかったんだけど」
自分->>相手: E:「左右違う靴で出勤してた」
自分->>相手: P:「マジで穴があったら入りたかった」
事例6:GROWモデルを自己分析に
| 項目 |
内容 |
| フレームワーク |
GROWモデル |
| 本来の用途 |
コーチング、1on1 |
| リキャスト先 |
創作の方向性を決める自己分析 |
| 要素 |
本来の使い方 |
リキャスト後 |
| Goal |
相手の目標 |
自分が創作で達成したいこと |
| Reality |
相手の現状 |
今の自分の創作状況 |
| Options |
選択肢 |
取りうる創作の方向性 |
| Will |
行動決定 |
次に書く作品・テーマ |
graph TD
A[G:読者の心を動かす作品を書きたい] --> B[R:今は技術寄りで感情が薄い]
B --> C[O:①キャラ深掘り ②実体験を入れる ③読者の感想を研究]
C --> D[W:次作は実体験ベースで書く]
17-4. リキャスト発想法
新しいリキャストを見つけるための問い。
| 問い |
例 |
| このフレームワークの「構造」は何か? |
PASONA法=「問題→共感→解決→行動」の流れ |
| その構造は、他のどんな場面で使えるか? |
問題提起→共感→解決策提示=相談への回答にも使える |
| 各要素を別の言葉に置き換えると? |
Problem→読者の悩み、Solution→作品、Action→読むという行動 |
graph LR
A[フレームワーク] --> B[構造を抽出]
B --> C[要素を抽象化]
C --> D[別の場面に当てはめる]
D --> E[リキャスト完成]
17-5. リキャスト早見表
| フレームワーク |
本来の用途 |
リキャスト先の例 |
| PASONA法 |
セールスレター |
創作告知、相談への回答 |
| SBI型 |
部下へのフィードバック |
作品レビュー、感想 |
| SCQA法 |
プレゼン冒頭 |
自己紹介、作品のあらすじ |
| 5Why |
根本原因分析 |
キャラクターの動機深掘り |
| PREP法 |
報告書 |
雑談のエピソードトーク |
| GROWモデル |
コーチング |
創作の自己分析 |
| AIDA法 |
広告 |
SNS投稿、作品紹介 |
| SWOT |
経営分析 |
自分の強み・弱みの整理 |
| BATNA |
交渉 |
人間関係の選択肢確保 |
17-6. まとめ
リキャストの本質は「構造の転用」である。
- フレームワークの「用途」ではなく「構造」を見る
- 構造を抽象化し、別の場面に当てはめる
- 合わなければ別のフレームワークを試す
フレームワークは道具だ。本来の使い方に縛られる必要はない。