第14章:フレームワーク一覧:コーチング・育成系
14-1. 概要
相手の答えを引き出す技術。それがコーチングである。
教えるのではなく、問いかける。答えを与えるのではなく、答えに気づかせる。部下や後輩、あるいは自分自身に対して「どうしたいの?」と問うための技術だ。
この章では、相手の成長を促し、行動を引き出すためのフレームワークを扱う。
14-2. フレームワーク一覧
| 名前 | 構造・要素 | 用途 |
|---|---|---|
| GROWモデル(グロウモデル) | Goal → Reality → Options → Will | 1on1ミーティング、セルフコーチング |
| SBI型(エスビーアイがた) | Situation → Behavior → Impact | フィードバック(第8章でも紹介) |
| サンドイッチ法 | Positive → Negative → Positive | 指導、評価面談(第8章でも紹介) |
14-3. 各フレームワークの詳細
GROWモデル
世界標準のコーチング会話モデル。「で、どうする?」まで確実に落とし込む。
| 要素 | 英語 | 問い | やること |
|---|---|---|---|
| G | Goal | どうなりたい? | 目標を明確にする |
| R | Reality | 今どうなってる? | 現状を把握する |
| O | Options | 何ができる? | 選択肢を洗い出す |
| W | Will | どうする? | 行動を決める |
sequenceDiagram
participant コーチ
participant 相手
Note over コーチ,相手: G:Goal(目標)
コーチ->>相手: 「どうなりたいですか?」
相手->>コーチ: 「営業成績を上げたいです」
Note over コーチ,相手: R:Reality(現状)
コーチ->>相手: 「今はどんな状況ですか?」
相手->>コーチ: 「月10件の契約で、目標の半分です」
Note over コーチ,相手: O:Options(選択肢)
コーチ->>相手: 「何ができそうですか?」
相手->>コーチ: 「訪問数を増やす、提案内容を改善する、既存客に紹介を頼む…」
Note over コーチ,相手: W:Will(意志)
コーチ->>相手: 「どれをやりますか?いつまでに?」
相手->>コーチ: 「まず来週から訪問数を1.5倍にします」
GROWモデルの質問例
| 段階 | 質問例 |
|---|---|
| Goal | 「理想の状態は?」「何を達成したい?」「成功したらどうなる?」 |
| Reality | 「今どんな状況?」「何が起きてる?」「これまで何を試した?」 |
| Options | 「他に何ができる?」「もし制約がなかったら?」「誰かに相談できる?」 |
| Will | 「どれをやる?」「いつから始める?」「最初の一歩は?」 |
graph TD
A[G:目標設定] --> B[R:現状把握]
B --> C[O:選択肢洗い出し]
C --> D[W:行動決定]
D --> E[実行]
E --> F[振り返り]
F --> A
GROWモデルとティーチングの違い
| 項目 | ティーチング | コーチング(GROW) |
|---|---|---|
| 主導権 | 教える側 | 相手 |
| 答え | 教える側が持っている | 相手の中にある |
| 目的 | 知識・スキルの伝達 | 気づきと行動の促進 |
| 適した場面 | 相手が初心者の時 | 相手に経験がある時 |
graph LR
subgraph ティーチング
A1[教える側] -->|答えを与える| B1[相手]
end
subgraph コーチング
A2[コーチ] -->|問いを投げる| B2[相手]
B2 -->|答えを見つける| B2
end
SBI型(復習)
第8章で紹介したが、コーチングでも重要なので再掲。
| 要素 | 英語 | やること | 例 |
|---|---|---|---|
| S | Situation | 状況を述べる | 「昨日の会議で」 |
| B | Behavior | 具体的な行動を述べる | 「積極的に発言していたね」 |
| I | Impact | その影響を述べる | 「おかげで議論が活性化した」 |
ポイント:人格ではなく行動にフォーカスする。「君は優秀だ」ではなく「この行動がこの結果を生んだ」と伝える。
サンドイッチ法(復習)
第8章で紹介したが、育成場面でも重要なので再掲。
| 要素 | やること | 例 |
|---|---|---|
| Positive | まず褒める | 「資料の構成は分かりやすかった」 |
| Negative | 改善点を伝える | 「ただ、データの出典が不明確だった」 |
| Positive | 励まして締める | 「次も期待してるよ」 |
14-4. コーチングの流れ
sequenceDiagram
participant 上司
participant 部下
Note over 上司,部下: 1. 信頼関係の構築
上司->>部下: 傾聴・共感(バックトラッキング、ペーシング)
Note over 上司,部下: 2. GROWで対話
上司->>部下: G:「どうなりたい?」
部下->>上司: 目標を言語化
上司->>部下: R:「今はどう?」
部下->>上司: 現状を整理
上司->>部下: O:「何ができる?」
部下->>上司: 選択肢を出す
上司->>部下: W:「どれをやる?」
部下->>上司: 行動を決める
Note over 上司,部下: 3. フィードバック
上司->>部下: SBI型 or サンドイッチ法で伝える
Note over 上司,部下: 4. フォローアップ
上司->>部下: 進捗確認、次のGROWへ
14-5. セルフコーチング
GROWモデルは自分自身にも使える。
| 段階 | 自分への問い |
|---|---|
| Goal | 「自分は何を達成したいのか?」 |
| Reality | 「今の自分はどんな状態か?」 |
| Options | 「自分には何ができるか?」 |
| Will | 「自分は何をするか?いつやるか?」 |
graph TD
A[悩み・課題] --> B[G:どうなりたい?]
B --> C[R:今どうなってる?]
C --> D[O:何ができる?]
D --> E[W:どれをやる?]
E --> F[行動開始]
14-6. GROWモデル + 雑談系フレームワーク
コーチングを始める前に、雑談系フレームワークで信頼関係を築く。
sequenceDiagram
participant コーチ
participant 相手
Note over コーチ,相手: 信頼構築フェーズ
コーチ->>相手: ペーシング(声のトーンを合わせる)
コーチ->>相手: バックトラッキング(言葉を繰り返す)
コーチ->>相手: さしすせそ(褒める・共感する)
Note over コーチ,相手: コーチングフェーズ
コーチ->>相手: GROWモデルで対話
Note over コーチ,相手: フィードバックフェーズ
コーチ->>相手: SBI型で具体的に伝える
14-7. 使い分けの基準
| 状況 | 推奨フレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 1on1ミーティング | GROWモデル | 行動まで落とし込める |
| 部下の成長支援 | GROWモデル + SBI型 | 気づきと具体的フィードバック |
| 評価面談 | サンドイッチ法 + SBI型 | モチベーション維持と具体性 |
| 自己分析 | GROWモデル(セルフ) | 一人でも使える |
| 褒める時 | SBI型 | 何が良かったか具体的に伝わる |
| 改善を促す時 | サンドイッチ法 | 角を立てずに伝えられる |
14-8. まとめ
コーチング・育成の基本は「答えを与えず、引き出す」こと。
- 行動まで落とし込む → GROWモデル
- 具体的にフィードバック → SBI型
- モチベーションを維持 → サンドイッチ法
教えるのではなく、問いかける。答えは相手の中にある。