第13章:フレームワーク一覧:思考・アイデア出し系
13-1. 概要
脳内会議を開く技術。それが思考・アイデア出しである。
一人で考えて煮詰まった時、同じ視点でグルグル回っていても答えは出ない。強制的に「視点」を切り替え、思考を拡散させる技術が必要だ。
この章では、アイデアを生み出し、思考を整理するためのフレームワークを扱う。
13-2. フレームワーク一覧
| 名前 | 構造・要素 | 用途 |
|---|---|---|
| 6色ハット思考法(シックスハット) | 白・赤・黒・黄・緑・青の6つの視点 | ブレスト、一人会議 |
| マンダラート | 3×3のマス目、中央にテーマ | アイデア発散、目標設定 |
| SCAMPER(スキャンパー) | 7つの発想切り口 | アイデア発想、改善 |
| 5Why(ファイブホワイ) | なぜを5回繰り返す | 根本原因分析 |
| KPT(ケプト) | Keep, Problem, Try | 振り返り |
| YWT(ワイダブリューティー) | やったこと, わかったこと, 次やること | 振り返り(日本発) |
13-3. 各フレームワークの詳細
6色ハット思考法
エドワード・デ・ボーノが提唱した、6つの視点を強制的に切り替える技法。
| 色 | 視点 | 問い | やること |
|---|---|---|---|
| ⚪ 白 | 客観・データ | 事実は何か? | 数字やデータだけを見る |
| 🔴 赤 | 直感・感情 | どう感じるか? | 論理を無視して感情で判断する |
| ⚫ 黒 | 批判・リスク | 何が問題か? | 徹底的にダメ出しする |
| 🟡 黄 | 肯定・利益 | 何が良いか? | 徹底的に良い点を探す |
| 🟢 緑 | 創造・新案 | 他にないか? | 新しいアイデアを出す |
| 🔵 青 | 管理・俯瞰 | 全体はどうか? | プロセス全体を管理する |
graph TD
A[テーマ] --> B[⚪白:データを確認]
B --> C[🔴赤:直感で判断]
C --> D[⚫黒:リスクを洗い出す]
D --> E[🟡黄:メリットを探す]
E --> F[🟢緑:新しい案を出す]
F --> G[🔵青:全体をまとめる]
使い方のコツ:今は「黒い帽子」だから徹底的にダメ出しする、次は「黄色」だから褒める、と明確に切り替える。混ぜない。
マンダラート
3×3のマス目を使って、思考を放射状に広げる技法。大谷翔平選手が目標設定に使っていたことで有名。
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| 中央 | テーマ・目標を書く |
| 周囲8マス | 関連するキーワード・要素を書く |
| 展開 | 各キーワードを中央にした新しい3×3を作る |
graph TD
subgraph 中央3x3
A1[要素1] --- A2[要素2]
A2 --- A3[要素3]
A4[要素4] --- A5[テーマ]
A5 --- A6[要素5]
A7[要素6] --- A8[要素7]
A8 --- A9[要素8]
A1 --- A4
A4 --- A7
A2 --- A5
A5 --- A8
A3 --- A6
A6 --- A9
end
A1 --> B[要素1を展開した3x3]
A3 --> C[要素3を展開した3x3]
A7 --> D[要素6を展開した3x3]
A9 --> E[要素8を展開した3x3]
マンダラートの例(目標:コミュ力向上)
| 雑談力 | 傾聴力 | 質問力 |
|---|---|---|
| 表情 | コミュ力向上 | 声のトーン |
| 語彙力 | 論理力 | 共感力 |
SCAMPER
ボブ・エバールが体系化した、7つの発想切り口。既存のものを変形させてアイデアを出す。
| 文字 | 英語 | 日本語 | 問い |
|---|---|---|---|
| S | Substitute | 代用 | 他のもので代用できないか? |
| C | Combine | 結合 | 何かと組み合わせられないか? |
| A | Adapt | 応用 | 他の用途に使えないか? |
| M | Modify | 変更 | 形・色・大きさを変えられないか? |
| P | Put to other uses | 転用 | 別の使い方はないか? |
| E | Eliminate | 削除 | 何かを削れないか? |
| R | Reverse | 逆転 | 逆にしたらどうなるか? |
graph LR
A[既存のもの] --> B[S:代用]
A --> C[C:結合]
A --> D[A:応用]
A --> E[M:変更]
A --> F[P:転用]
A --> G[E:削除]
A --> H[R:逆転]
B --> I[新しいアイデア]
C --> I
D --> I
E --> I
F --> I
G --> I
H --> I
SCAMPERの例(テーマ:傘)
| 切り口 | アイデア |
|---|---|
| Substitute | 布→透明ビニール(周りが見える傘) |
| Combine | 傘+ライト(夜道で光る傘) |
| Adapt | 日傘の技術を雨傘に(UVカット雨傘) |
| Modify | 巨大化(2人用傘) |
| Put to other uses | 杖としても使える傘 |
| Eliminate | 骨を減らす(軽量傘) |
| Reverse | 逆さに開く(車内で濡れない傘) |
5Why
トヨタ生産方式で有名な、根本原因を探る技法。
| 回数 | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 1回目 | なぜ? | 「なぜ遅刻した?」→「寝坊した」 |
| 2回目 | なぜ? | 「なぜ寝坊した?」→「夜更かしした」 |
| 3回目 | なぜ? | 「なぜ夜更かしした?」→「動画を見ていた」 |
| 4回目 | なぜ? | 「なぜ動画を見ていた?」→「寝る前のルーティンがない」 |
| 5回目 | なぜ? | 「なぜルーティンがない?」→「意識していなかった」 |
graph TD
A[問題:遅刻した] --> B[なぜ?:寝坊した]
B --> C[なぜ?:夜更かしした]
C --> D[なぜ?:動画を見ていた]
D --> E[なぜ?:寝る前のルーティンがない]
E --> F[根本原因:意識していなかった]
F --> G[対策:寝る前ルーティンを作る]
KPT
アジャイル開発由来の振り返りフレームワーク。
| 要素 | 英語 | 問い |
|---|---|---|
| K | Keep | 続けるべきことは何か? |
| P | Problem | 問題点は何か? |
| T | Try | 次に試すことは何か? |
graph LR
A[振り返り] --> B[K:続ける]
A --> C[P:問題]
A --> D[T:試す]
C --> D
YWT
日本能率協会が開発した、日本発の振り返りフレームワーク。
| 要素 | 日本語 | 問い |
|---|---|---|
| Y | やったこと | 何をやったか? |
| W | わかったこと | 何がわかったか? |
| T | 次やること | 次は何をするか? |
graph LR
A[Y:やったこと] --> B[W:わかったこと]
B --> C[T:次やること]
C --> A
KPTとYWTの違い
| 項目 | KPT | YWT |
|---|---|---|
| 起点 | 良い点と問題点 | 事実(やったこと) |
| 向いている場面 | チームの振り返り | 個人の振り返り |
| 特徴 | 問題解決志向 | 学習志向 |
13-4. 使い分けの基準
| 状況 | 推奨フレームワーク | 理由 |
|---|---|---|
| 視点を切り替えたい | 6色ハット思考法 | 強制的に視点が変わる |
| アイデアを広げたい | マンダラート | 放射状に発散できる |
| 既存のものを改善したい | SCAMPER | 7つの切り口で変形できる |
| 根本原因を探りたい | 5Why | 本質に辿り着ける |
| チームで振り返りたい | KPT | 問題と改善が明確になる |
| 個人で振り返りたい | YWT | 学びを次に活かせる |
13-5. 思考の流れ
graph TD
A[課題発生] --> B{発散?収束?}
B -->|発散| C[アイデア出し]
C --> C1[6色ハット]
C --> C2[マンダラート]
C --> C3[SCAMPER]
B -->|収束| D[原因分析]
D --> D1[5Why]
C1 --> E[振り返り]
C2 --> E
C3 --> E
D1 --> E
E --> E1[KPT]
E --> E2[YWT]
13-6. まとめ
思考・アイデア出しの基本は「視点を強制的に切り替える」こと。
- 視点を変えたい → 6色ハット思考法
- アイデアを広げたい → マンダラート
- 既存を改善したい → SCAMPER
- 根本原因を探りたい → 5Why
- 振り返りたい → KPT / YWT
同じ視点でグルグル回っても答えは出ない。強制的に切り替えろ。