付録D:複雑なシーンの対応例
D.1 多人数会話
3人以上が会話するシーン。話者列により即座に判別可能。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | なあ、明日どうする? |
| 花子 | 私は買い物に行きたい |
| 次郎 | 俺も行く |
| 美咲 | じゃあ私も |
D.2 同時発話
複数人が同時に発話するシーン。話者列に複数名を記載する。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | じゃあ明日、駅前に—— |
| 太郎・花子 | えっ!? |
| 次郎 | どうした二人とも |
| 全員 | ……なんでもない |
D.3 会話と動作の交錯
戦闘や作業をしながら会話するシーン。地の文を挟んでリズムを作る。
【太郎】太郎は剣を構えた。敵が突進してくる。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | 来るぞ! |
| 花子 | 左から援護する! |
| 太郎 | 頼んだ! |
【太郎】花子の矢が敵の足元を射抜いた。怯んだ隙に、太郎が斬りかかる。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | 今だ! |
| 花子 | 止めを刺して! |
D.4 電話・通信
離れた場所にいる相手との会話。話者列に状況を付記する。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | もしもし? |
| 花子(電話越し) | あ、太郎?今大丈夫? |
| 太郎 | うん、どうした? |
| 花子(電話越し) | 明日の件なんだけど…… |
D.5 群衆シーン
モブキャラが複数発話するシーン。識別子で区別する。
【語り手】広場に人だかりができていた。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 男A | おい、見ろよ! |
| 女B | 何あれ…? |
| 男C | 嘘だろ…… |
| 群衆 | わあああ! |
【語り手】人々が一斉に逃げ出した。
D.6 会話の入れ子(回想)
回想内で会話が発生するシーン。場面転換で時間軸を明示する。
【太郎】太郎はあの日のことを思い出していた。
回想 5年前 教室
【太郎】放課後の教室。二人きりだった。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 幼い太郎 | 約束だよ? |
| 幼い花子 | うん、約束 |
現在 公園
【太郎】木漏れ日が二人を照らしている。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | あの約束、覚えてる? |
| 花子 | ……覚えてるよ |
D.7 語り手交代
視点が切り替わるシーン。場面転換で視点を明示する。
太郎視点
【太郎】彼女は何を考えているんだろう。いつもと様子が違う。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | どうしたの? |
| 花子 | ……なんでもない |
【太郎】何かを隠している。そんな気がした。
花子視点
【花子】言えるわけない。こんな気持ち。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | どうしたの? |
| 花子 | ……なんでもない |
【花子】太郎の顔をまっすぐ見れなかった。
D.8 心の声を含む会話(横配置)
セリフと心の声が同時に存在するシーン。横配置で表現する。
【裕也】面接官の前に座った。手のひらが汗ばんでいる。
| 話者 | セリフ | 心の声 |
|---|---|---|
| 面接官 | 志望動機を教えてください | |
| 裕也 | 御社の理念に共感し、ぜひ貢献したいと考えました | 頼む、声震えてないよな |
| 面接官 | なるほど。では、あなたの強みは? | |
| 裕也 | 粘り強さです。一度決めたことは最後までやり遂げます | 嘘じゃない、嘘じゃないぞ |
【裕也】裕也は笑顔を保っていた。だが膝の上の拳は、白くなるほど握りしめられていた。
※心の声がない行は心の声列を空欄とする。
D.9 心の声を含む会話(縦配置)
セリフの直後に心の声が続くシーン。縦配置で表現する。
【悠斗】放課後の廊下。呼び止められた。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 奈々 | ねえ、これ、バレンタインのチョコ。受け取って |
| 悠斗 | え……ありがとう |
| 心の声 | なんで俺なんかに |
【悠斗】悠斗は小さな包みを両手で受け取った。奈々はもう走り去っていた。
D.10 心の声を含む会話(引用ブロック・思考先行型)
セリフより先に心の中で思考が発生するシーン。>>引用ブロックで表現する。
【太郎】花子が目の前に立っている。真剣な顔だった。
【太郎】ここで嘘をつけば、きっと楽になれる。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 花子 | 昨日、どこにいたの? |
【太郎】正直に言え。もう逃げるな。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 太郎 | ……美咲と、会ってた |
【太郎】花子の表情が凍りついた。太郎は目を逸らせなかった。
D.11 記憶の断片を含むシーン
地の文の中でキャラクターの脳裏に過去が一瞬フラッシュするシーン。
【太郎】太郎は河川敷のベンチに座っていた。夕日が川面に反射して、目が眩む。
【太郎】また思い出してしまう。
あの日、彼女は笑っていた。「また明日ね」と手を振って。桜の花びらが舞っていた。
【太郎】目を開けると、夕日はもう半分沈んでいた。隣には誰もいない。当たり前だ。もう、いないのだから。
D.12 孤立した断片を含むシーン
物語の冒頭に、帰属先のない謎めいた断片が置かれるシーン。
いつか届くといいな、この声が。
駅のホーム 夕方
【陽介】水篠がホームの端に立っていた。風がホームを吹き抜ける。
| 話者 | セリフ |
|---|---|
| 水篠 | 寒くなったね |
| 陽介 | うん。もう冬だな |
| 水篠 | そうだね。……もう、冬だね |
【陽介】水篠はイヤホンを両耳に戻した。陽介には、その表情が少しだけ寂しそうに見えた。
D.13 台本での複合シーン
台本形式で、場面転換・演出・複数キャラ・演技指示・モノローグが組み合わさるシーン。
| 場所 | 時間 |
|---|---|
| 病院の屋上 | 深夜 |
| 演出 | 内容 |
|---|---|
| BGM | 静かなピアノ。寂しげな旋律。 |
| SE | 風の音 |
| 話者 | セリフ | 演技指示 |
|---|---|---|
| 里奈 | こんな時間に、何してるの | 静かに。責めるでもなく、ただ問いかけるように。 |
| 和也 | ……別に。星でも見ようかと思って | 振り返らずに。声に力がない。 |
| 里奈 | 嘘つき | 少し笑って。でも目は笑っていない。 |
| 演出 | 内容 |
|---|---|
| モノローグ | 和也 |
星なんか見てない。ただ、ここにいたかっただけだ。
| 演出 | 内容 |
|---|---|
| 間 | 5秒 |
| SE | フェンスに寄りかかる音 |
| 話者 | セリフ | 演技指示 |
|---|---|---|
| 里奈 | ……隣、いい? | 優しく。許可を求めるように。 |
| 和也 | 好きにすれば | 素っ気なく。でも拒絶ではない。 |
| 里奈 | じゃあ、好きにする | 穏やかに。和也の隣に座る。 |
| ナレーション |
|---|
| 二人は何も言わず、夜空を見上げていた。言葉はなくても、隣にいることが全てだった。 |
| 演出 | 内容 |
|---|---|
| BGM | フェードアウト |
D.14 対応方法まとめ
| 種類 | 対応方法 |
|---|---|
| 多人数会話 | そのままテーブルで記述 |
| 同時発話 | 話者列に複数名を記載 |
| 会話と動作の交錯 | 地の文(>)を挟む |
| 電話・通信 | 話者列に状況を付記 |
| 群衆シーン | モブに識別子(男A、女B等) |
| 会話の入れ子 | 場面転換で時間軸を明示 |
| 語り手交代 | 場面転換で視点を明示 |
| 心の声・同時 | 横配置(話者|セリフ|心の声) |
| 心の声・直後 | 縦配置(心の声ドッキング) |
| 心の声・思考先行 | >>引用ブロック(【話者】明記必須) |
| 記憶の断片 | >>>(帰属は>>または地の文から判別) |
| 孤立した断片 | コードブロック(帰属先なし) |
| 台本の複合シーン | 場面転換・演出・演技指示・モノローグの組み合わせ |