第1章 はじめに
「好き」と「嫌い」。
私たちは日常的にこの言葉を使う。あの食べ物が好き、この人が嫌い、その色が好き、あの匂いが嫌い。まるで当たり前のように、私たちは世界を「好き」と「嫌い」で切り分けている。
しかし、立ち止まって考えてみると、奇妙なことに気づく。
「好き」とは何か。「嫌い」とは何か。
生物学は言うだろう——生存に有利なものを好み、不利なものを嫌うのだと。心理学は言うだろう——過去の経験と記憶が好悪を形成するのだと。しかし、それだけでは説明できない現象がある。
なぜ、気づいたら好きになっているのか。自分で選んだ覚えがないのに。
なぜ、嫌いなものが気になって仕方ないのか。無関心でいられないのか。
なぜ、好きと嫌いは反転することがあるのか。昨日の好きが今日の嫌いになるのか。
本資料は、これらの問いに対して、ひとつの体系的なモデルを提示する。
「好き」と「嫌い」を、静的な状態としてではなく、動的なシステムとして捉える。そのシステムを「ポラリミクス(Polarimics)」と名付ける。Polarity(極性)とDynamics(力学)を組み合わせた造語である。
ポラリミクスは、三つの計測レイヤー、三方向の力、そして中心に位置する虚無的結節点から構成される。このシステムを通じて、「好き嫌い」という現象の構造を明らかにしていく。なお、ポラリミクスは実証研究に基づく科学理論ではなく、自己理解を深めるための概念モデルである。