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複雑性保存の法則

複雑性は消えない、移転するだけ

付録E. FAQ

E.1 法則の基本に関する質問

# 質問 回答
1 この法則は何の役に立つのか 「このフレームワークを導入すれば問題が解決する」という安易な期待に対する免疫機構として機能する。複雑性がどこに移転したかを問う視点を提供する
2 複雑性は本当に保存されるのか 厳密な等量保存を主張するものではない。観測される現象は「複雑性の非消滅」であり、形態を変えて系内に留まり続けるという傾向の記述である
3 この法則は証明されているのか されていない。数学的・物理学的な証明基盤を持たず、観察と論理的推論に基づく記述である。なお、証明を試みる行為自体が観測起爆性(原則3)を発動させる
4 原則は8つで足りるのか 不明である。原則の過不足を検証するためのフレームワークが必要となるが、そのフレームワークは本法則の適用対象となる。原則の追加は分割増殖性(原則6)を、削減は簡素化抵抗性(原則4)をそれぞれ発動させる。原則数もまた近似である
5 この法則を一言で言うと何か 「複雑性は消えない」である。ただし、この一言への簡素化は簡素化抵抗性(原則4)の適用対象であり、この回答では本法則を正確に表現できていない

E.2 原則の適用に関する質問

# 質問 回答
6 どのような場面で使えるのか フレームワークの導入・設計・評価を行うあらゆる場面で適用可能である。ただし、この「あらゆる場面」という主張自体が汎用自殺性(原則8)の適用対象である
7 フレームワークを作ること自体が無意味なのか 無意味ではない。本法則はフレームワークの有用性を否定するものではなく、フレームワークによって複雑性が「消滅する」という誤解を否定するものである
8 複雑性の移転先を意識すれば問題は解決するのか 解決はしない。ただし、移転先を意識的に選択することで、複雑性が最も害の少ない場所に配置される可能性は高まる。これは解決ではなく共存戦略である
9 最も重要な原則はどれか 不滅性(原則1)がすべての原則の基礎として機能している。ただし「最も重要な原則を選ぶ」という行為自体が簡素化であり、簡素化抵抗性(原則4)が発動する
10 原則同士が矛盾した場合はどうすればよいか 対処法は存在しない。付録Bのバッティングマトリクスが示す通り、原則間の競合はすべて新たな複雑性の生成に帰結する。これは無限後退性(原則5)の直接的な発現である

E.3 既存理論との関係に関する質問

# 質問 回答
11 ゲーデルの不完全性定理と同じことを言っているのか 同じではない。構造的な類似性はあるが、ゲーデルの不完全性定理は数理論理学における厳密な証明であり、本法則はフレームワーク一般に関する観察的記述である。なお、本法則が対応するのは主に第二不完全性定理(自身の無矛盾性を自身の内部で証明できない)の構造である
12 オッカムの剃刀と矛盾するのか 矛盾はしない。オッカムの剃刀は「シンプルな方を選べ」という規範的原則であり、本法則は「簡素化しても複雑性は消えない」という記述的原則である。両者は異なるレベルの主張を行っている
13 熱力学第一法則の応用なのか 応用ではなく、構造的類似性を持つ別の記述である。エネルギー保存則(熱力学第一法則)はエネルギーという定量的な物理量に関する法則であり、本法則は複雑性という定量化が困難な概念に関する記述である
14 銀の弾丸はないを拡張したものか 部分的にはそう解釈できる。ブルックスの主張をソフトウェア工学からフレームワーク一般に拡張した側面がある。ただし、この拡張自体が汎用自殺性(原則8)の適用対象となる

E.4 本法則自体に関する質問

# 質問 回答
15 この法則自体がフレームワークではないのか その通りである。本法則は自身が記述する制約の適用対象であることを明示的に認めている。これは矛盾ではなく、本法則の構造的特徴である
16 この法則を改善することはできるのか 改善の試みは可能であるが、改善行為自体が本法則の各原則を発動させる。原則の追加は分割増殖性(原則6)を、削減は簡素化抵抗性(原則4)を、再構成は無限後退性(原則5)をそれぞれ発動させる
17 この法則を無視したらどうなるのか 複雑性の移転自体は認知の有無に関わらず発生し得る。ただし、本法則は観測起爆性(原則3)により、認知されなければその作用を認識できない。認知せずにフレームワークを運用した場合、複雑性の移転に気づかないまま問題が蓄積する可能性がある
18 この法則を否定する方法はあるのか 「複雑性が完全に消滅するフレームワーク」の実例を示すことで否定可能である。ただし、その実例の検証には文脈依存性(原則7)が適用され、特定の文脈での成功が普遍的な否定を構成するかは不明である
19 このFAQ自体が法則の適用対象ではないのか その通りである。本FAQは法則に関する疑問を整理するフレームワークであり、本法則の8原則すべての適用対象である。本回答を読んだ時点で、あなたは観測起爆性(原則3)により被弾済みである