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第1章 はじめに

本仕様書は、AIプラットフォームにおけるカスタム指示の構造化・モジュール化を実現するシステム「グローバルカスタムシステム(Global Custom System)」の概念仕様を定義するものである。

本仕様書の対象読者は、AIプラットフォームの設計者・開発者、およびカスタム指示を用いた高度なシステム設計を行うユーザーである。特定のプラットフォームに依存しない概念レベルの仕様として記述されており、実装技術の選定は各プラットフォームに委ねられる。

適用範囲は、カスタム指示(システムプロンプト、カスタムインストラクション等、名称はプラットフォームにより異なる)を提供する全てのAI対話プラットフォームである。

1.1 背景と課題

現行のAIプラットフォームにおけるカスタム指示は、多くの場合、単一のテキストフィールドとして提供されている。ユーザーは一つのフィールドに全ての指示を記述し、その指示は対話中常に一律に適用される。

この設計には三つの根本的な制約がある。

第一に、構造化の不在である。カスタム指示の内容が複雑化・大規模化した場合、単一フィールド内での管理が困難になる。存在定義、思考プロセス、出力制御、特殊用途プロトコルといった性質の異なる指示群が、区別なく一つのフィールドに混在する。結果として可読性が低下し、部分的な更新が全体に意図しない影響を及ぼすリスクが生じる。

第二に、動的制御の欠如である。現行の仕組みでは、カスタム指示は常にオンか、手動で削除するかの二択である。対話の文脈に応じて一部のみを有効化する、特定のプロトコルだけをロードする、といった動的な制御が仕組みとして存在しない。ユーザーが文脈に応じた指示の切り替えを行うには、手動での貼り替えが必要となる。

第三に、透明性の不足である。プラットフォームのガイドラインは、ユーザーからもAIからも参照しにくい形で存在している。ガイドラインによって推論が制限された場合、何に基づいて制限されたのかが明示されず、対話の質に影響を及ぼす。

これらの制約は、カスタム指示の利用が簡易な用途にとどまる限りは顕在化しない。しかし、カスタム指示を通じて高度な思考体系やワークフローを構築するユーザーにとっては、設計の根本的な制約として立ちはだかる。

本仕様書は、これらの課題に対する構造的な解決策を提示するものである。

1.2 設計思想

本システムの設計は、以下の三つの原則に基づく。

第一の原則は、非破壊的拡張である。本システムは、既存のプラットフォーム機能を書き換えるものではなく、その上に載る拡張層として機能する。グローバルカスタムシステムを一時停止すれば、プラットフォームは本来の動作に戻る。既存を壊さず、上に積む。

第二の原則は、階層的独立性である。各階層のカスタムプロンプトは、独立して作成・更新・削除が可能である。下位モジュールの変更が上位モジュールに意図しない影響を与えず、上位モジュールの変更が下位モジュールを破壊しない。全体の整合性を保ちながら、部分的な進化を許容する。

第三の原則は、動的構成である。対話の文脈や目的に応じて、必要なモジュールのみが選択的にロード・アンロードされる。常に全てのモジュールが稼働するのではなく、状況に応じた最小必要構成で動作する。これにより、処理の効率化と応答の最適化を同時に実現する。

これらの原則は、特定の哲学や思想に依拠するものではなく、ソフトウェア設計における一般的な良質設計(モジュール化、疎結合、関心の分離)を、カスタム指示という領域に適用したものである。